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ワイ スイス? そのA Why Swiss machine?





2017/06/01
イスのポリシーを表現する形容詞として代表的な「永世中立」。いかなるブロックにも与しないその独立独歩ぶりは、国連加盟についてさえ物議を醸し出したほど。一見無関係とも思えるこの「永世中立」と「スイス製工作機械の持続的優位性」には、大きな関連を見出すことができます。



をさかのぼること約70年前、1950年に有名な多国間委員会が設立されます。意訳とされていますが、ほのめかす本質的なその目的から「対共産圏輸出統制委員会」と訳されて認知されてきた”ココム”です。
その名称が意味する通り、東西冷戦下における各種先端技術製品その他の、共産圏への輸出に規制を設けるという趣旨で、多くの西側ブロック諸国が加盟したことにより、工作機械製造において国際競争力のある当該諸国のメーカーは、このココムに配慮しながらのマーケティング活動が前提となります。
※ココムの実質的強制力や委員会としての事実上の活動の程度、その位置付けについては一般的解釈とは異なる視点や論点、調査会の公式データも存在しておりますが、ここでは一般的解釈にしたがっています。



かなるブロックにも与しないスイスは、もちろんこのココムへは加盟せず、これは同時に東西両ブロックへのマーケティングを完全な自由意思で行える優位性を持つこととなり、当然ながらこの排他的条件を以後40年以上に渡って最大限に利用していくこととなります。



の優位性を認識していたことを裏付ける事実ともなりますが、後の冷戦終結、すなわちココムの解散に至る1990年代の初頭から、スイスの工作機械メーカーで、事業の売却、再編成、撤退、縮小が相次いで始まります。現在も時おりこういったスイス工作機械メーカーの再編成やグループ統合などは散発的に起こりますが、発端と連鎖の程度、ピークの存在は必ずといっていいほどこの時期です。日本では当時バブル崩壊による不況の最中であったことから、これらスイス工作機械業界の変化が、「似たようななんらかの不況によるもの」といった漠然とした解釈で受け止められましたが、本質的な理由は、将来に渡って東側という排他的市場を喪失していくことへの現実的な対処を開始したと考えるのが自然です。



大な市場を40年間以上も独壇場にできたということは、先端的工作機械に必要となる固定的なイニシャル開発投資コストをより幅広く分散できること、要はスケールメリット、規模の経済性を享受できたことにほかならず、いかなる基礎的・先端的投資を最も経済的に正当化できる優位的ポジションにいたことを意味します。

また、 「経験曲線」という経営学の用語が示す「習熟によって実質的コストが下がっていく」という便益は、累積生産数量という絶対的アドヴァンテージによってますます開発投資コストを正当化することとなります。



のスイスの歴史的な立場上の絶対的独自性こそが、いわゆる”ピンからキリまで”の”ピン”領域、つまり”そこそこの加工精度でかまわない領域”とは異なる、ギリギリまで加工精度を追求する、従来の延長線上にはない、他とは断絶した固有の先端的投資が持続的に必要となる特定領域においてはいまだにスイス製が優位である構造を成り立たせています。いかに加工精度要求が究極的に高まるにせよ、現実にそれが必須となる顧客は少数派であり、そうなればその究極領域を実現する工作機械開発のために必要な固有の投資額を分散させるのに、「東側を除く」という、市場規模をさらに狭める制約を抱えざるをえない西側諸国が抱えていたジレンマを尻目に、大手を振って東西を分け隔てなく狙うスイスは圧倒的に固有コスト分散に有利であったことに加え、いったん開発が実用化されれば、そもそも東側市場には参入者が限定されており、熾烈な競争にもさらされないという複合的な競争上のアドヴァンテージがあったため、市場規模が小さいがゆえに参入か否かという悩ましい市場にこそ、スイスがその優位性を十分に発揮し、今に至る優位性を整えたと言えます。

要するに企業の優位性を投資の意思決定という視点から分析する経営学的な立場からは、その投資が他者と比較して自身にもっとも有効で経済的かどうかこそが重要で、スイスは出だしからこの究極領域への投資の意思決定を迷いなく行うことができたのです。

現代においても、というより現代だからこそ、特定の究極領域を目指そうとしても、いくつかの関門を突破するためにイニシャルステージで必要な開発投資コストを経済的に分担できる、つまり投資の固定費を広く分担することによって経済性を確保できる「他者からじゃまされない」排他的市場構造、過去のスイスが享受できたような東側市場のようなものはすでにどこにも見出せないということが、いかに潜在的な新規参入者が技術的にキャッチアップしてその目処を立てたとしても、「見えない参入障壁」、つまり想定する市場の量的な構造的限界がつきつけられてしまって、スタディ段階で投資を正当化できず参入自体がギブアップさせられてしまう構造的な理由となっています。

ゆえに現在でもスイス製メーカー同士が”究極領域”では競合となりやすいのであり、これを崩すべくこの領域へ製品開発投資から参入するためには、決して多数とは言えない現実の購入顧客数と自由競争化での受注確率を掛け合わせた相当冷徹なロジックを超えた並々ならぬ腹のくくりが参入者に要求される、といった後発者にとっては「歯がゆく悔しいアンフェアともいえる事情」が存在しています。



身の政府のポリシーを、これだけ有効に特定の産業が活用しつくし、後の参入障壁までを築いた成功事例は他にほとんどないのではないでしょうか。
(次回 そのBへつづく)




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