まず、初見の方が気をとめないわけにはいかないもの、それは”STOP to GO" と呼ばれる特徴的な秒針の動きです。赤く塗られ、先端が丸くなっている秒針は、12の位置で一旦停止。約2秒ほどの停止時間の終盤に、分針が1分先にすすみ、そののち停止していた秒針がなにごともなかったように取り澄ましてふたたび秒をきざみます。この、動作は秒針が12の位置に来るたびに毎回行われます。マシニストの皆様においてはすでに察しの通り、毎回12の位置で時間の補正をおこなっているのです。
しかしながら、業務用の公式備品、プロ・ユースであることからほのめかされる確たる信頼性、”STOP to GO”システムが採用される以前からの公式サプライヤーでありつつ、引き続き”STOP
to GO"を実用化したという歴史的・技術開発的事実、そしてさらには通常の商品市場にほとんど流通していないという希少性など、MOBA
TIME社の製品は唯一といってもよい独自の魅力に満ちています。
上記の”STOP to GO"機能は、司令部と時計本体との間にタイム・マネージメントシステム制御の連動が必要となるため、MOBA TIMEの一般商品の仕様には、その1分毎の補正システムは反映されておりません。したがって、MOBA
TIME社の一般商品に赤い秒針は付いておりません。しかしながら、一見簡略化と思えなくもないこの仕様、むしろ、1944年から1954年までの”STOP
to GO”以前のMOBA TIME社製スイス鉄道時計に秒針はなく、2本の黒い針のみであったという事実を加えていただくことで、"STOP
to GO"の機能なしに秒針は不要であるとの、絶対的な歴史的事実が反映された結果であることが分かります。