ナノ加工追求においては、
   過去の慣性・惰性は機能しません。

福田将彦氏



2018年2月20日

れだけではない。先の場面につづく、クライマックスの高精度測定機による測定においてもスイス側を黙らせてしまう同氏。サブミクロンの評価を下すのに、その数値をただの定量的なものに留まらせず、定性的な分析も加えていくことで、より効率的で効果的な今後の打ち手を決断したい場面。そこで何種類かのUPR(フィルター)変更による比較検討を提案し、戸惑う現地作業者に、これも丁寧に断りを入れて自身が手慣れた手順で作業し、データを分析し、まとめ上げる。これも時間的制約が迫る中での、やむを得ない行動だ。

「(※ナノマシンではない、一般の)工作機械による加工オーダーは、(このケースのように)サブミクロンのものがありますが、このオーダーになれば、測定機によってはそろそろギリギリになるはずです。そうなれば、条件を固定しつづけることに疑問がでてきてもおかしくはないはずですが、どうしても慣性に任せてしまう、もしくは指摘を受けることが少ないという現状があるのでしょう」

「ナノ加工の実地においては、それが1ナノ、2ナノ、3ナノ、いづれなのか?という局面があります。このオーダーになると、この差を測定機が示す数値だけで評価をすることはむずかしくなります。こうなったときには、例えばUPR (フィルター)を何種類か変えることで、その必要な判断に妥当性を持たせることが必要になる。やはり測定機を徹底的に使いこなすことが必須となるのです。当然、ナノのスケールではなおさら、機器によってはさらに追い込まれた状態で機能を果たすこととなりますから、この例のように、UPRはこれこれの理由で何番に決めています、といったような、条件を固定することができません。いつもこうやっているから、という
慣性がまったく働かなのです。」


あくまで質問に答える形で控えめに語る。もう少しあったようだ。

「とてもシンプルな現場機器である、直動式のインジケータは、それをかならず立てた状態で測定に用いなくてはならないはずです。例えそれがそう使えるからと言って、斜めにした状態で測定に用いることは、当然誤った数値を読み取っていることになります。信頼あるブランドで、読み取りがいくらで、取付も作動もするからという理由で、それをそういった使い方で、それを信用するのだとは思いますが。使いこなしは、あくまで技術を理解したうえでなければ」

「ナノ加工システムづくりは、プロセスフローの最中において、都度基準づくりが必要になります。基準がもっともである、という妥当性を得ることなくして、フローは進行できないのです。したがって、基準づくりにかかわるものは、測定機を徹底的に熟知し、自身の仕事ぶりが信頼にたるものであることを証明できることが求められます。つまり、自身のスペシャリティに加え、
ナノ加工を成す周辺の要素へのかかわりがどうしても求められます。」


こういった一連の思考と行動は、すべてナノ加工システムづくりの実地経験から見出され、身に付き、はからずも他のオーダーへ展開された実例。かつ、ナノ加工のアルゴリズムを成す「測定」の領域において、門外漢の知るところとなったごく一例。思うに、機械、工具、パス、評価といった他の領域においても、その知己は推して知るべし。



ちらからは丸見え、という状態がある。どうやら次元において有意な差がある場合、優位なほうからはすべてが見渡せるもの。もちろん立場の高低や心理的序列により、ひろく散見される「見下す」態度では全くない。「ナノ加工システムづくり」の先駆者からは、東西を問わず、どうしても見えてしまうもの、が多いというだけなのだ。

「技術的優位性を持つ(欧米の)工作機械」輸入に携わる輩としては、まさしく赤面の至りだが、「ナノ加工」とくに「ナノ加工システムづくり」、プレーヤーとしてのみならず、コンストラクターとして前衛をいくのは、日本の同社。その目線からの示唆は、大いに傾聴に値する。


「現場」と「技術」をつなぐ機能が、うまく働いていないという傾向は、東西を問わず拍車がかかっていると思います。工作機械がレベルアップし続けるステージにある(あった)会社には、かならず開発、設計、製造、組み立て、加工を一気通貫に見渡す機能を担う担当がいる(いた)と思います。」

「例えば、(先のスイスの場合)現場にある測定機器の使い方(使われないことも含め)などは、全員が自発的にそういったレベルに至ることはなかなか期待はできません。ですが、
だれかが、セクションにしばられずに横断し、啓発していくことでそれは浸透するはずです。」

「ナノ加工システムづくり」は、絶対にひとりではできません。それは、学術的な体系によることもできない挑戦なのです。要素技術を俯瞰して、スパイラルを上がっていくためには、すべてを高い次元で行わなければならない。そして、
各要素をつなぐボンドが絶対必要です。」

ンタビューナノメートルの曠野(こうや 完結
ノ加工システムづくりの成功においては、それをなすアルゴリズムも、組織も、すべて俯瞰がなされ、一気通貫で筋が通ることで、はじめて上昇スパイラルを上がることができること、 福田氏のコメントは、そこに集約する。ただし、
知っておくべきこと。それは、同社の事業部に、こういった一気通貫担当の部署があるわけではないということ。さらには、ナノ加工アルゴリズムを俯瞰する担当が決まっているわけでもない。それが機能するハード的仕掛けがあるわけではない。

だが、それを誰が担っているかは、すでに説明の必要はないだろう。「端的になれない」のはそのためだ。

「ナノ加工を追求していくほど、ひとつのインプットに、ひとつのアウトプットを期待するといったリニア思考では限界があります。たくさんの要因に関連を見出さなければならない。五感を頼ることが必須で、合理的な思考だけでは制約がおおきい。」

前衛を突破していく者は、合理的精神に縛られない。となれば、その心境はアカデミックな博士というよりも、教科書とは無縁の曠野(こうや)を、むしろ喜々として行くイノベーター、アーティストだろうか…やはり、“アヴァンギャルド”…ウィキペディアからのコピペに頼るほかはない。

“合理的な人間は、自分を世界に適応させる。
非合理的人間は、世界を自分に適応させようと粘る。

あらゆる進歩は、この「非合理的な人間」に頼っているのだ”

 ジョージ・バーナードショー



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